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2013/04/21

先人たちの実績の上で、仕事をしているという事実

「ったく、誰だ!こんなシステム作ったのは!」

職場で、こんな声を聞いたことはありませんか?
もしくは、同じようなことを言ったことはないでしょうか?



私はかなりあります(笑)。


仕事の効率を上げるために作られたシステムなのに
使い勝手の悪い業務システムになっていたり。

仕事のリスクを減らすために作られたルールが
なんのためにやっているのかわからない内容になっていたりする。


システムやルールに限らずですが
少なからず、先人や他者や作ったものに文句を言いたくなる時がありますよね、、。


先日。

私が、会社で大変お世話になった方から、
とある言葉を教えて頂きました。

その方は、先日の2013年3月31日で
実に39年もの長きに渡り勤め上げた我が社を
定年退職されたのですが、
そのときの挨拶で引用しようとした言葉だったそうです。



その言葉とは。

「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」




「他に策がなかったんだ」というような意味。


この言葉、
沖縄返還をめぐり、当時の佐藤栄作首相の特命を受け、
極秘裏に米国との密約交渉にあたった、
若泉敬氏のものです。

(C)NHK




佐藤首相は沖縄の「核抜き返還」を決めた共同声明に合意しました。
1972年のことです。
公式記録はここまで。

若泉氏によれば
両首脳は大統領執務室脇にある小部屋で、緊急時の核再持込に関して、
若泉氏とキッシンジャー補佐官の交渉で出来上がっていた密約文書に署名した。

これで沖縄にはアメリカは殆どいつでも核兵器を持ち込める、という
もとの状態に戻り、「核抜き返還」は形骸化してしまいました。

棺桶に入るまで秘密を持っていこうとした若泉氏は、
1994年、その形骸化の事実を公衆に晒し
2年後に自殺しています。

 
この言葉は、その告白した本のタイトルです。
※もとは、陸奥宗光の言葉からの引用だそうですが。



お世話になった方は、この言葉を引用することで、

時代の移り変わりや、環境の変化により、
自分が手がけた仕事が、先々他者から、
「誰がこんな風に作ったんだ」とか、
「何でこんな風になってるんだ」と、
酷評されてしまうこともあるだろう。
しかし、それを恐れる必要はない。
大事なのは、その瞬間・瞬間で、
「他に策はない」と思えるぐらい熟慮して仕事をすることだ。
その結果なんと言われようとも、己を恥じることはない。


という激励を残したかったそうです。

熟慮の末、
「俺のキャラじゃねーわ」ということで、
引用するのはやめてしまった、とのこと(笑)ですが・・・。



これを教えてもらい、目頭がギュッと熱くなりました。

こういった場面、確かに多いからです。

天才的な「先見の明」があれば話は別ですが
先を見越して仕事をしているつもりでも、
将来、何が起こるかわかりません。
予測不可能なことは沢山起こりますから。

過去にやってきた仕事が、
時が経てば不要なもの、意味の無いものに変わってしまうことなど、
よくあることです。

変化のスピードが激しい毎日において
ともすれば、先人たちの実績や仕事を踏み倒すことに
なんの躊躇も感じなくなります。


いとも簡単に
「なんでこんな仕様になってるんだ」と批判してしまうこと。
職場に横行しているのではないでしょうか。
わが身を振り返っても、身に覚えがありすぎます。




当然、現状に合わなくなってしまっているルールは、
変化を余儀なくさせられますが


その変化の最先端に立つときに、
もはや過去のものとなってしまった遺産に対し
「敬意」を持って接する。


自分が今やっている仕事は、先人たちの実績の賜物であり
その上に乗って仕事をしているに過ぎないのですよね。
そして将来、未来の人たちも、
私たちが上積みした実績の上に乗って、新しい仕事をしてくれる。

仕事というものは、そういうものなのですよね。

だから、今やっている仕事に対しても
「これ以上の策はない」と思うまでに考えて取り組みたいと思っています。


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